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ORSat 22.06.16

これからのリーダーシップ:課題解決の影で私たちが忘れていること【マリタ・フリジョン】

CRR global創始者マリタ・フリジョンの写真と彼女の講演内容タイトル

激しい時代の変化を前にして、これからの新しいリーダーはどうあるべきか。今、世界中で議論が交わされています。CRR Global共同創設者のマリタ・フリジョンは、複数人の間における関係性を扱うシステムコーチングの理論を編み出し、ORSC(組織と関係性のためのシステムコーチング)プログラムを世界30カ国で展開する中、新しいリーダーシップの形:Systems inspired leadershipを提案しています

人と人との関係性の焦点を「誰が誰に対して何をするのか?」から「今、この関係性の間で何が起ころうとしているのか?」へと移していくORSCの知恵は、これからのリーダー像とチームの関係性をどのように変えていくのでしょうか。

国際コーチング連盟主催のもと、今年5月16日から1週間にわたり全世界規模で行われたイベント”International Coaching Week 2022”では、CRRアジア太平洋地区(APAC)共同プログラムとして中国・シンガポール・日本の3カ国共催の特別イベントを行い、その中で共同創始者マリタが基調講演を行いました。Amazonベストセラー「Systems Inspired Leadership(日本未発売)」の著者でもあるマリタが描く、関係性システムを中心としたリーダー像の具体的な姿について、彼女の講話のポイントを振り返りながら紐解いていきましょう

(内容に入る前に・・)ORSCの「システム」とは?
ORSC(組織と関係性のためのシステムコーチング)においてコーチングする対象は、厳密にいうとクライアント(依頼者、その夫婦、チーム、組織・・)自身ではありません。その人たちの間にある「関係性」を対象とし、それを「システム」と捉えて扱っていきます。詳しく知りたい方はこちらの記事「システムコーチングって何ですか?」をご覧ください。

Systems-inspiredなリーダー/コーチとは?

リーダーは、自分以外の人々を導くという点でコーチと共通しています。どのようにして導くのかという点において、リーダー/コーチは”systems-inspired”であることをマリタは提唱し、次のように説明しています。

(以下、マリタ講話より) Systems-inspiredなリーダー/コーチは、自分が正解を与えるのではなく、システムに明らかにさせることにより導いていきます。答えはすでにそこにあり、それが明らかにされることを待っている。そう信じてリード/コーチすることができるのが、systems-inspiredであるということです。

コーチの語源は「馬車」であると言われています。とても重要な人を、今いる場所から行きたい場所へと連れていく馬車です。行き先を決めるのは馬車ではなく、そこに乗っている重要な人です。Systems Inspired Coachingも同様で、その重要な人、チーム、組織を彼らの行きたい場所に連れていくのです。決して、コーチが行って欲しいところや行くべきと思うところにではないということに注意が必要です。

関係性システムというものを、どう捉えるか(5原則)

音楽のバンドやオーケストラをイメージしてみてください。たとえ同じ曲を演奏していたとしても、どのように聴こえるか/解釈できるかは、そのバンドや楽団によって違うでしょう。それと同じように、「システム」はそれ自体が独自のアイデンティティや個性を生み出しています

混乱に満ちた今日の世界では忘れがちなことですが、システムはもともと生み出す力と創造性にあふれています。私たちコーチの仕事は、そこで何が起きているかを明らかにし、システム自ら解決策を見つけられるよう手助けすること。言い換えれば、コーチであるあなたの素晴らしさを「ダウンロード」するのではなく、そのチームの素晴らしさを「アップロードする」ということです。

そのためにも、その関係性システムにいるすべてのメンバーが、システムの声を体現していると理解することは重要です。個人個人にフォーカスするのではなく、システム全体の声としてそこから学び、ディープ・デモクラシー(深層民主主義)を実践する。それこそが、systems-inspiredであるということです。

関係するすべてのメンバーが各々の役割を担うことで(講話当日の)今日のイベントが実現しているように、すべてのシステムには役割が存在します。そしてその役割は、その個人ではなくシステムに帰属します。システムが自己組織化し、機能を実行していくプロセスなのです。

さらにシステムは常に出現し、変わっていきます。変化していかなければいけないのです。つまり予測付かないことがどんどん起きていき、私たちは当然そのことに驚いたりしますが、その中でもそこから何かを生み出そうと視点をシフトしていかなくてはならないということです。

systems-inspiredなあり方

ではsystems-inspiredなコーチであるためには、実際どのようにすればいいのでしょうか。それを考えることで、Systems Inspired Leadershipのあり方も見えてきます。

まず、五感を使って見て、聴いて、感じる(sense)ということ。コミュニケーションで相手を理解するのに必要なのは、話されている言葉だけではありません。トーンやスピード、距離感などを感じ取ることも同じくらい重要です

もし相手の表情に何かを感じ取ったのなら、「大丈夫かしら?」「何か質問ありますか?」と投げかけ、システムの状況を明らかにしていく。そしてそこで起きていることを受け入れる。そうすることで、心理的安全性(systems inspired safety)を一緒に創っていくことができます

ではもしそのシステムの中に対立がある場合は、どのようにすればいいのでしょうか?

「誰が誰に対してどうこう」ということに気を取られるのではなく、その対立という「箱」を、大切なことを教えてくれる情報の源と捉えて注意深く開けるのです。その対立は、私たちに何を教えてくれよう、気づかせてあげようとしているのでしょうか。それを注意深く見ていくことで、新たな発見があり、コーチ/リーダーであるあなたはそこから新たに創造していくことができるようになるでしょう。

では実際に目の前の関係性を紐解き、お互い理解し合えるコミュニケーションをデザインしていくには、具体的にどのようなステップを踏めばいいのでしょうか。どのような大きさ・距離感の関係性であれ、以下の3つのフェーズを意識して進めることが非常に重要だとマリタは言います。

systems-inspiredな導き方:3つのステージ

  1. 出会う
  2. 明らかにする
  3. (システムの)「協働関係」を築く / 「行動」を促す

Systems inspired coachingには、反復するこの3つのステージが必ずあります。アジェンダに沿って進める中で、自分が今どこのステージにいるのかを意識することは、非常に難しいですが、重要です。

コーチは「出会う」ことが好き

これらの具体的な説明に入っていく前に、興味深いデータをシェアしましょう。私は今まで、世界中のさまざまな文化の中で、コーチはもちろんのことファシリテーターやコンサルタント、アジャイリスト(アジャイル開発実践者)たちとセッションを行ってきました。そしてその中で必ず、皆さんにこう聞いてきました:「この3つのフェーズのうち、あなたが一番快適にできるのはどれですか?

おもしろいことに、どのような環境でも、ファシリテーターやコンサルタント、アジャイリストなどは最初の「出会う」フェーズを選ぶことはほとんどありません。一方で、大半のコーチはこの「出会う」フェーズが一番心地良いと答えます。それはコーチが非常に関係性志向であり、これから起きることにどう取り組むか関心を持っている表れのように思えます。

あなた自身は、どのフェーズが一番心地よく進めそうでしょうか。

それではこれから、実際にこの3つのフェーズをどのようなことに注意して行なっていけばいいのか見ていきましょう。

3つのフェーズの具体的な進め方・注意点

1.「出会う」フェーズ

<前回会った時の彼らとは違う>

金曜日の午後、目の前にいるクライアントチーム(コーチングの対象者)は、前回月曜日の午後に会った時の彼らとは違います。その間に何が起こったかを、私たちは知らないのです。そこで「分かってる」と思って先を急がず、しっかりと「出会う」ことが大切です。その際、すでに答えが見えていることを、質問の形で投げかけていないかも気にかけましょう。たとえば「チェックインに時間を使いすぎていると思いませんか?」と言いながら、「使いすぎている」という答えに導こうとしないということです。

<心理的安全性を築くために>

何か大変なことが起こっている場合、(慌てたり取り乱したりと、)普通でない反応をしてしまってもいいんだとまず「ノーマライズ」することで、心理的安全性が築かれます。また考え方のダイバーシティを受け入れることで、同じ事象に対してもいろんな受け止め方があるのだという空気を創ることができます。それは、競争ではなく共創の空気づくりにも繋がります。

また前回話した時に比べて、何がうまくいった/いかなかったのかに関心を持ちましょう。ここで使えるのが「DTA (Designing Team Alliance: チームの意図的な協働関係」です。チームが何を求めていて、それが上手くいかない場合はどうすればいいのかを明らかにするツールだからです。現在、そしてこれから迎える困難を明らかにし、どのようにしていきたいかを明らかにし、カルチャーを創っていくのがDTAです。

②「明らかにする」フェーズ

<システム自身が明らかにしていく>

ここで「明らかにする」主体は、あなたではありませんシステムです。コーチであるあなたは、すべての声を聴いて、見て、感じ取ることで、どのようにしてシステムが明らかにしていけるのか助けていくのです。深く入っていきたいところですが、彼らが扱える範疇を超えないことも大切です。ゆっくり、システム自身が明らかにしていくのを見守りましょう。

<It’s OK to not be OK!>

このフェーズでも、「大丈夫だよ」とノーマライズしていくことが有効です。

最近特にこの必要性が世界中で顕著になったのが、コロナ禍です。私たちCRR Globalの世界中のチームでも、急に対面のクラスをバーチャルに移行しなくてはいけなくなったりと、通常でないことが次々と起こりました。

そういう時は、”It’s OK to not be OK(大丈夫でいられなくたって、大丈夫だよ)”とまずノーマライズします。そこで立ち止まって、何がOKでないのか考えます。そこに十分とどまって紐解いていくことで、ようやく「まてよ。いい面だってあるじゃないか。このおかげで、今こうしてバーチャルで世界中とつながることができたじゃないか」などと切り替えることができるのです。

<「困った人がいる」時・・>

また焦点を「誰が何をしているのか」から「ここで何が起きようとしているか」にシフトすること。これは非常に重要です。特に「困った人がいる」ような時に有効です。

「困ったやつだ。アイツが・・」となる代わりに、その人はシステムが必要としている役割なのだと理解することです。その役割が教えてくれることを尊重し、その役割から解放してあげましょう。「彼が(彼女が)言っている問題は、他にも起きていないかな。」そうやって視点を広げ、その対立という贈り物が何を教えてくれるのか、注意深く見ていくことでそこから新しく何かを生み出すことができるはずです。

③ (システムの)「協働関係」を築く/「行動」を促すフェーズ

<「問題解決」が前面に出ることの落とし穴>

実際のアクションにつなげるというこのフェーズにおいて、プレッシャーに押されてついやってしまうのが「コンサルタントの帽子をかぶる」こと。つまり、何をすべきかをこちらから伝えるということです。これは、コーチだけでなく、アジャイリストやファシリテーターにもよくあることです。

このやり方でうまくいくこともあるのですが、持続的な変化にはつながりません。ソリューションというものを前面に出し過ぎると、外部にいる私たちの視点から見つけたソリューションになってしまい、彼らの内的経験によるものではなくなってしまいます。これは私が幾度となく感じたことで、よく気を付けなければいけません。

ここでも、すべての声を聴くことが重要になってきます。そうやって安全性を担保したうえで、何が今日のセッションではできなかったのか、記録に残します。それをもとに、これから起こるべきことを彼ら自身に考えてもらいます。直面している困難は何なのか、ポストイットなどを使って書き出してみましょう。その周りを歩いてみたり、投票してみたりしながら、次のセッションまでにできる実行可能なことは何なのか、考えてもらいましょう。

<成功へと向かうリハーサルを一緒に行う>

またコーチやコンサルタントとして、私たちがもっとやっておくべきと思うのが、望むべき成果に向けたポジティブなリハーサルをすることです。たとえば今日のセッションを経て、次は「明らかにする」フェーズに注力したいと思ったのならば、どうやってそこを効果的に進めることができ、その後の「整える&アクションを決める」までつなげ、クローズすることができるのか。そういった成果に向けたリハーサルを行なうことで、どうすれば成功といえるのかの定義を定めることができます。

戦略的な計画を立てるだけではなく、チームとして一緒にそれをひととおり通してみるのです。「通常はこうやってああやりますよ」と決めつけず、みんなに参加させ、楽しんでみましょう。実際のところ現実はリハーサルとまったく同じにいくことはないと認識したうえで、起こるべき困難とどのようにしてそれを乗り越えるかについて、一緒に見つけていくのが非常に重要です。

課題解決の影で忘れがちな、とても大切なこと

私は今までたくさんのNGO・ソーシャルセクターの中で仕事をしてきました。その中で気づいたのは、人々が成果を出すことや問題を解決すること/正しいことを行なうことなどの大きなプレッシャーに晒されているということです。そうすると何が起きるかというと、うまくいったことや達成できたことを認め、感謝するということがすっぽり抜け落ちてしまうのです。なぜなら、また次の解決すべき課題がすぐに立ち現れるからです。

今の私のチームでも、このCRR Globalの中でもそれは見て取れます。つまりこれは私の責任でもあると思っています。次なるイノベーティブなことに、次の課題解決に・・と、どんどん邁進し続けるあまり、立ち止まって「あぁ、よかったね」と振り返る余裕がないのです。

(心理学の教授で、夫婦関係の研究で有名なジョン・M・)ゴットマンも言っているように、人間にはネガティブな比率より遥かに多くのポジティブな部分が必要です。次のアクション、次のアクション、次の・・と繰り返してばかりいると、課題ばかりに目がいき、ネガティブな比率が肥大化しバランスを崩してしまいます。そこで最後にみなさんにお伝えしたいのが、できたこと/よかったことに目を向け、感謝する循環をつくりましょうということです。

このセッションをクローズするにあたって、みなさんにも一緒に考えてみて欲しいと思います。 

「今日、うまくいったことは何ですか?」

 これから仕事を終えて、家族や大切な人たちに、
今日よくできたことを伝えるとしたら、何を話せますか?

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マリタ・フリジョンが共同創始したCRR Globalは、18年以上にわたって世界中でシステムコーチングのコースを展開し、その思いを引き継ぐパートナーは現在30カ国以上に広がっています。国際コーチング連盟(ICF)が認定した唯一のシステムコーチングの機関として、世界中で学ぶことができ、日本でもシステムコーチングを学び実践できるようになる各種コースや、エグゼクティブ層に特化したコースなどもご用意しています。

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