【中編】コーチングはこれからどこへ向かうのか?

国内最大級のコーチングカンファレンスCoaching Transformation 2021 
~コーチングはどこから来て、今どこにいて、これからどこへ向かうのか?~

昨年末、ORSCC(Organization & Relationship Systems Certified Coach)の櫻本真理さんが日経WOMAN「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2022」で心の揺らぎサポート賞を受賞されました。

櫻本さんは、株式会社コーチェットの代表取締役CEOを務めていらっしゃいます。先日公開した櫻本さんのインタビューの中で、コーチェットが昨春(2021年4月10日)主催された国内最大級のコーチングカンファレンス“Coaching Transformation 2021”についてお聞きしました。

インタビューを読んだ方から「コーチングカンファレンスでは、どのような話がされたのか知りたい」という声をいただき、冒頭に行われたセッション「業界のパイオニアから見る、コーチング業界の変化」をご紹介することにしました。

このセッションに登壇されたのは、パーソナルコーチの育成をし、昨年創業20周年を迎えた銀座コーチングスクール代表の森英樹さん、「コーチングを社会の共通言語に」を理念に掲げ活動している国際コーチング連盟(ICF)日本支部・理事長の紫藤由美子さん、そして弊社の共同代表である森川有理の3名。モデレーターは櫻本さんです。

左から:櫻本真理さん、森川有理、森英樹さん、紫藤由美子さん

(*)プロフィールの詳細はこちらをご参照ください https://coached.jp/ct2021

日本のコーチング業界はどのように変化してきたのか、また、コーチングのパイオニアたちはここからどんな世界になっていくことを願っているのか――などについて【前編】【中編】【後編】にわけてご紹介します。

【前編】業界のパイオニアから見る、コーチング業界の変化
【中編】コーチングはこれからどこへ向かうのか?(※現在この記事を読んでいます)
【後編】コーチングのバトンを未来へ

(コーチングカンファレンスで話された当時の内容を抜粋し、まとめました)

【中編】コーチングはこれからどこへ向かうのか?

――こうした変化を受け、「ここからどんな風に変わっていくのか」を考える上で、皆さんがコーチング業界に参入された時に感じていたことと、その時描いていた未来との違いがヒントになるのでは? という問いかけから話は進んでいきました。

見えるところ、見えないところで影響を及ぼしているコーチング

森川:コーチングという新しい職業が生まれたことに、大きな意味があると思っています。今まで正解の生き方とか、成功者とはといった既成概念が世の中にありました。リーダーのイメージもそうですよね。こういうタイプの人がリーダーとしてふさわしいみたいな。そうした既存の思い込みがどんどん変わってきています。その背景には、実はかなりコーチングとその世界観が見えるところ、見えないところで影響を及ぼしているという実感があります。

例えば、うちの娘は22歳なんですね。彼女に自分の人生をどんな風に捉えているか聞いてみると、就職をして同じ組織に一生勤めあげるといった、オーソドックスな人生設計とは全く違うことを考えていて。自分らしく起業したいとか、何かしら社会に役に立つことをやりたいんだと当たり前のように話しています。先ほど「多様性」という言葉をおっしゃっていましたが、そこにコーチングは大きく貢献していて、これはかなり早いスピードで浸透してきたなと思っています。

「変容している個人の意識」と「組織のあり方」にギャップが

森川:ただ一方で、組織が個人と同じ勢いで変容しているかというと、残念ながらそうではありません。早いスピードで変容している個人の意識と、それを受け入れる器であるはずの組織のあり方や評価制度、キャリアの捉え方などには大きなズレがあり、グローバルとも大きな違いがあります。コーチングが日本に来て20年もたっているというのに必要な変容が進んでいないと強く感じるところです。

その背景には、日本の文化や企業文化の特徴に深く根差していると思います。変化を起こしていくことへの躊躇や、前例踏襲から逃れられなかったり。ドラスティックに変革していくことに対する恐れがあるのではないでしょうか。

――その話を受けて、「グローバルの文脈で日本を見た時にどんな風に見えているか?」という質問が紫藤さんに投げかけられました。

心の面で海外から注目されている日本のコーチング

紫藤さん:欧米で話をすると、感情は聞くもの日本の方たちと話すと、感情は察するもの。そうした文化の違いが良さとして出ているのが、日本のコーチングかなと思います。海外からも日本のコーチングは注目されています。日本のコーチングは丁寧で、心にどれだけ入っていけるかといったところは日本人の得意なところでもあります。脳科学的にも、理論を感じる場所と感情を司るところは違いますよね。感情に刺さって、初めて人は行動に移すという観点から注目されているのだと思います。

ミレニアル世代にもっと知ってもらうことが課題

紫藤さん:数字的に顕著な違いとしては、グローバルで見ると、比較的コーチとして年数が浅い人たちがとても多いです。日本だけ突出して55%が10年以上、新しい方の参入が少ないという特徴があるんですね。年齢に関しては、Xゼネレーションとかベビーブーマーの人たちがグローバルでも日本でも多いのですが、いわゆるミレニアル世代は日本が圧倒的に少ないんです。知られていないのか、何か参入障壁があるのかは掘り下げてみたいと思います。

今日このカンファレンスを聴いてくださっている方たちはミレニアル世代が中心ではないかと思いますが、そういう方たちにもっと知ってもらうにはどうしたら良いのだろうか、というのが日本の課題だと思っています。

――【後編】では、「なぜ、今システムコーチングなのか?」「ここからどんな世界を願っているのか?」などの問いを取り上げます。

(ORSCCのライター:大八木智子)