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ORSCLabo 21.04.12

チームコーチング時代の幕開け/システムコーチが読み解く 「ICFチームコーチングコンピテンシー」

ORSC Laboは、今年から13名に増えたCRRGJのファカルティが、システムコーチング®の世界観、概念、ツールなどをご紹介しながら、現場での事例を交えて「社会の今」を紐解いていこうという試みです。

2021年度は、「チームコーチング時代の幕開け」と題して、特に「チーム・組織に対するシステムコーチング」に焦点を当てて行きます。チーム・組織に対するコーチングは、近年「チームコーチング」として定着しつつあり、個人コーチングとあわせて組織の課題に対する重要なソリューションの一つとなりつつあります。昨年は国際コーチング連盟(ICF)から「チームコーチング」についての「コンピテンシー」が発表されました。「コーチング」は「個人」だけではなく「チーム」の時代へと、新しい進化の1ページを開いたのです。

我々CRR Global Japan では「組織と関係性システムコーチング(ORSC®)」のトレーニングを提供しています。ORSCは「個人」ではなく「チーム(関係性システム™️)」へコーチングをするというアプローチであり、創設者の Faith Fuller と Marita Fridjhon が共同開発して以来、20年近くが経ちました。多くの組織・チームのニーズに、この20年に及ぶ我々の経験がお役に立てる時代になったことに、CRRのチーム一同喜びを禁じ得ません。

同時に社会の中には「チーム・組織」に関わるアプローチは多種多様に存在しています。これらは何か1つのアプローチが絶対的に優れているというものではなく、状況や課題に応じて使い分けていくことが大事であることは言うまでもありません。その中で、特に日本の中では比較的に新しい分野である「チームコーチング」がどんな特徴をもち、どういった効果を上げるのか。
本連載では「ORSCとしての視点」からそこを紐解き、また「チーム」と言う枠組みを超えた「関係性システム」への関わりの可能性をお伝えしていきたいと思います。

チームコーチングの複雑性

前述のICF「チームコーチング・コンピテンシー」によると「チーム開発(Team Development)」に関するアプローチは以下のように分類されており、チームコーチングはその中の一つとされています。(注1)

チーム開発(Team Development)
長期のチーム、複数の多くのモダリティ、多数のトピック
チームビルディングチームトレーニングチームコンサルティングチームメンタリングチームファシリテーションチームコーチング
時間枠短期、1−5日短期、1−5日短期~長期単発、長期短期、1−5日長期   数ヶ月
プロセス演習教材カリキュラムを通じてチームと協力コンサルタントが専門知識を共有メンターの共有対話をファシリテートチームとコーチのパートナーシップ
成長領域関係性強化新しい知識とスキル洞察を得る新しい知識明快さゴールの達成:チームの持続可能性
チームダイナミクス 紛争解決最小限最小限最小限、アドバイス最小限最小限不可欠
専門性:プロセスをリードするのは誰か?インストラクタートレーナーコンサルタントメンターファシリテーターとチームチーム

特にチームコーチングとチームファシリテーションについて、以下のように述べています。

「チームコーチングとチームファシリテーションの間には明確な区別がないかもしれません。むしろ、ファシリテーションとコーチングは繋がっていて、よいチームコーチはこの2つのアプローチの間を途切れることなく対応することができます。」

しかし、一方で次のようにも述べています。

「ファシリテーションはコミュニケーションを向上させて、(チームに)明確さを達成するよう提供するが、表面的なところに留まり、チーム・ダイナミクスの分析にまで掘り下げることがありません。チームコーチングでは、個々のチームメンバーのパーソナリティ、サブグループ、そして、それらがチームのパフォーマンスに影響を与える可能性がある、水面下のグループダイナミクスの探求をファシリテーションよりも深く行います。」

もちろん、こういった深い部分でのグループダイナミクスを扱うファシリテーションも存在していますが、ここで我々コーチにとって大事なことはそのような深い領域をチームコーチングは扱う必要があるのだ、と言うことでしょう。コンピテンシーでは以下のようにも述べています。

「チームコーチングは多面的なので、チームコーチには、個人コーチングよりもさらに広範な知識の基盤が必要です。コンフリクト(対立)を見極めて解決する、チーム内のパワーダイナミクス(力関係)を認識する、高いパフォーマンスをチームが発揮するために何が必要かを理解している、チームの結束を構築し、ルールや規範を作り、全員の参加と貢献を奨励し、チームの自律性と持続可能性を促進する方法を知っている、といったことへの理解が求められるのです」

一見して非常に多くのことが求められることが分かります。
人と人が関わり合う時、そこに起きることは複雑系であり、個人に対する支援と比べて、コーチが視野に入れなければいけない要素も飛躍的に増える、と言うことです。

ツール:「紐のワーク」からチームのダイナミクスを紐解く

この複雑性をもった「人の集まり」のことをORSCでは「関係性システム」と呼んでいます。そして、それを端的に体験できる「紐のワーク」(String Exercise)と言うツール(演習)があります。ここでは「紐のワーク」を簡単にお伝えしつつ、チームコーチングに求められる「複雑性」を「関係性システム」でどのように捉えて、関わってくのか、その一端をお伝えします。

「紐のワーク」は大変シンプルな演習です。チームメンバーに一人一本ずつ長さ1m程度の紐を渡し、チームでその紐を掛け合って組んでもらいます。上からチームを眺めると「蜘蛛の巣」のようになることをイメージしてもらうといいでしょう。その上でお互いに紐を引っ張ったり、緩めたりしてもらいます。紐の動きに慣れたら、時にはチーム内でよく起きることを「比喩的に紐で表現」してもらったりもします。一つの例ですが、以下のようなパターンも起きたりします。(注2)

  • いつもリーダーのAさんが引っ張っている
  • 周りのメンバーも引っ張りについていこうとはしているが、テンションがうまく掛からず図らずも「フリーライダー」のようになってしまっているBさんがいる
  • Bさんのことが気になっているメンバーもいれば、Aさんの方しか向いていないメンバーもいる

チームの「関係性」に起きている「ダイナミクス」が紐を通じて体感される瞬間です。
演習を終えて、その体感やそこからの気づきをコーチは引き出します。そして、さらに以下のような問いでチームでディスカッションすることも可能です。

  • チームがさらに高いパフォーマンスを発揮するために、この関係性のダイナミクスはどのくらい効果的だろうか?
  • チームの表面には出ていない対立(コンフリクト)やすれ違いはないだろうか?
  • チームの結束をより高めて、全員の参加と貢献を促すために何が必要だろうか?
  • チームがより自律的に持続可能に動いていくためにどんな合意があるといいだろうか?

このようなディスカッションはもちろん容易ではないでしょう。時に「パンドラの箱を開く」と表現される組織のメンバーもおられます。しかし、ORSCではこの「関係性システム」を一つの有機体(生命体)のように捉えて関わることで、チームに起きているあらゆることに可能性を見出します。

多くのコーチングのアプローチでは、コーチが答えを持っているのではなく「クライアントが答えを持っている、もしくは見つける力がある」というところから関わっていきます。ORSCでは個人ではなく、この「人の集まり」が「関係性システム」として「生命体」のような存在であるならば「関係性システム」として答えを見つける力があると信じており、そのことをRSI®の5原則(注3)の一つとして「システムには生まれながらにして知性があり、生み出す力と創造性にあふれている」としています。

ちなみにお気づきでしょうか?上記の4つの質問の内容は前述のチームコーチング・コンピテンシーに関連していながらも、コーチの側から答えを与えるのではなく、あくまで「質問」することで、クライアントである「関係性システム」から引き出していきます。そして、それはクライアントが「個人」であっても「関係性システム」であっても変わらない、我々コーチの仕事だと思います。

クライアントに答えを見つける力がある

さて、このコンセプトをお伝えした時に、スッと受け入れられる方となかなか受け取りづらい方とおられるようです。個人的な話になりますが、この反応は私が初めてコーチングに触れた10数年前を思い出させます。

「クライアントに答えを見つける力がある」

このコーチングのスタンスに心動かされた私は当時さまざまな場面でこれを伝えました。正にスッと受け取られる方もおられた一方

「それは理想論で、現実的には教え、導かなければ相手は成長しないでしょう」

といった反応はとても多かったように思います。

しかし、2021年現在、状況は大きく変わりました。コーチングのスタンスもますます多くの方が普通に受け取られる時代になりました。ここから10年が経った時、「関係性システム」としてチームを捉えて「知性と生み出す力と創造性にあふれている」と捉えることが普通になる、というのは、決して果てない夢ではない。そんな風に思います。

ここから本連載を通じて、皆さんと「関係性システム」から関わる「チームコーチング」の可能性の探求の旅をご一緒していければ幸いです。

注1: 国際コーチング連盟 The ICF Team Coaching Competencies 
Team Coaching Competencies
(2021年4月時点 未邦訳 本文中の引用個所は全てCRR Global Japanによる英語版からの試訳)

注2:本記事に登場するワークの例や人物は筆者が経験した様々なケースを守秘義務に留意しながら複合して創作したものであり、特定の人物、チーム・組織のものではありません。

注3:「RSIの5原則」はシステムコーチが関係性システムに関わる時の原則として、CRR Global が提唱している。 出典「ORSCプログラムマニュアル」 


※法人向けORSC®︎プログラム「組織内チームコーチ™️養成プログラム」
https://crrglobaljapan.com/corporation/

法人向けORSC®︎プログラム「組織内チームコーチ™️養成プログラム」
組織内チームコーチを養成しミドルマネジメントが自走する組織を創る

【おすすめ記事】
「チームコーチング時代の幕開け」第2弾!

  • 佐藤 扶由夫

    • 佐藤 扶由夫
    • CRR Global Japan合同会社トレーナー
    • ORSCC, PCC, CPCC

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    東京外国語大学卒業 東京都出身。 私立中高一貫校で教鞭をとる中でコミュニケーションの難しさ、面白さに魅かれ、「未来塾異文化対応訓練コース」(現 中津燎子の英語未来塾)などで探求を進める。2003年にコーチングを学び始め、その後勤務校で同僚の教職員にコーチングセッションを行う組織内コーチ(スクール・コーチ)を業務として開始。7年間でのべ1200時間のセッションを行いながら、学校組織活性化の一端を担った。 独立後は国内、中国、シンガポールを含むAPACを活動の場として、グローバル企業から地域の小規模な組織まで組織開発や研修などで関わっている。 また、世界最大規模のアウトドア・サバイバルスクールであるTracker SchoolやBoulder Outdoor Survival Schoolなど国内外の様々なアウトドア・プログラムに参加し、自然に対する学びを深めてきた。自然環境と社会の両方へ働きかける活動の一環として、NPO法人セブン・ジェネレーションNPO法人Pachamama Allianceへのサポーターを行いつつ、現在は八ヶ岳山麓の森に移住し「命は関係性の中にある」という内田節氏の言葉をテーマとして、新しい生活のあり方を家族と共に模索し続けている。

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