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ORSCLabo 21.12.09

ガンバレ、ニッポン!~日本のサラリーマンと多様性~

ガンバレ、ニッポン!日本のサラリーマンと多様性

私は大学を卒業後、日本企業に就職し、これまでの社会人人生を日本のサラリーマンとして歩んできました。サラリーマンやOLといった言葉は時代の流れとともに死語になりつつありますが、自分自身はサラリーマンとして人生を堪能してきました。そして、心のどこかでサラリーマンを応援している自分がいます。一方で、日本のサラリーマンはまだまだポテンシャルを発揮しきっていないのではと思ったりします。そのポテンシャルがさらに開花するには「多様性」がカギになるのではないか、システムコーチングの手法や考え方が役立つのではないか、自分の経験も含めて考えてみたいと思います。

日本のサラリーマンのポテンシャル「多様性」

日本企業のダイバーシティ推進度合いは世界に比べるとかなり遅れを取っています※1大手企業のホームページに掲載されている役員一覧、あるいはドラマに登場する役員会議の場面を思い浮かべればみなさまも同じように感じるのではないでしょうか。最近はダイバーシティに留まらず、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)を重要戦略として掲げる企業も増え、多様性に富んだ組織を作ることだけでなく、如何に多様な個性がお互いを認め、一体感を持って企業活動を行なえるかに焦点がシフトしています。そして、D&Iに加えてエクイティ(社員の不平等な状態を是正するための公平さ)に取り組んでいる企業も増えています。

様々なステークホルダーのニーズに応え、激しい競争に勝つために、企業は過去にないほど新しい価値を生み出していくことが求められています。イノベーションを生み出せるか否かは企業の死活問題であり、同質の社員ではイノベーションを生み出すには限界がある、様々なバックグランドの社員が様々な視点からチームを組んでコラボレーションすれば、より魅力的な商品、サービスを生み出せる、そのように考える企業が増えています。

日本企業では上位職になればなるほど、日本人男性が大勢を占めており、ダイバーシティの観点ではかなり遅れを取っていますが、世界から取り残されないためにも、より一層D&Iに力を入れていくことでしょう。そして、そのような時代の流れの中、多様性の波が押し寄せていることに対して、胸がざわついている日本のサラリーマンもいるのではないでしょうか。

これまで「日本男子」だけの居心地の良い職場が、女性や外国人が周りに増えてくることに対してどのように対応すればよいか困惑する人もいるでしょう。あるいは、全く異なる人種で構成される組織への異動の内示を受け、自分がマイノリティ側の立場になることに恐れを感じている人もいるかもしれません。このような状況で威力を発揮するような考え方やツールを幾つか紹介してみたいと思います。

無限の組み合わせによる無限の多様性

システムコーチングでは、IDIC(Infinite Diversity in Infinite Combination:無限の組み合わせによる無限の多様性)というコンセプトを、SFの名作「スタートレック」から援用させてもらっています。自分とは「違う」相手を、恐れる対象として関わるのではなく、喜びを生み出す対象として関わる、そうすると新たな可能性やイノベーションが生まれやすくなる、という考え方です。例えば、日本人にとって、初めて外国人と接するときには、恐れや不安の気持ちが沸き起こるかもしれません。その恐れや不安を喜びに変えるにはコツが必要です。

いつもの自分の思考パターンや姿勢を変えていく必要があります。そこで役に立つのが「メタスキル※2と呼ばれるシステムコーチングにおける「在り方」「姿勢」です。IDICの考え方を実践する際には、相手に対して「尊重」と「好奇心」のメタスキル、姿勢で接すると、恐れや不安の気持ちは徐々に喜びへと変わっていきます。具体的な事例を見てみましょう。

「尊重」と「好奇心」のメタスキルから関わる

私は日本企業のアメリカ法人に駐在していたことがありました。海外拠点を持つ日本企業では、本社と現地のコミュニケーションを円滑に進めるために、本社から海外拠点に人材を派遣することがよくあります。また、人材育成の観点からも駐在員を海外にローテーションさせる場合があります。私が派遣されたオフィスは白人、黒人、ラテン系、アジア系、様々の人種で構成されており、そして言語は英語、日本語、スペイン語、中国語が飛び交います。多様性に富んだ組織ですが、まだまだインクルーシブと呼べるような状態ではありませんでした。

他の日本企業と情報交換をする機会がよくありましたが、やはりどこの日本企業も同じような悩みを持っており、お互いが相手の文化について深く理解していない、しようとしていないことが主な要因として挙げられます。そのような状況下では、インクルーシブ(inclusive)の反対であるエクスクルーシブ(exclusive)な行動が取られます。例えば、

・駐在員同士だけでランチに行く
・現地スタッフだけでランチを食べる
・日本語が読めない現地スタッフがメールに含まれているにもかかわらず日本人同士で日本語のメールでやり取りをする
・本社とばかりコミュニケーションを取り、現地スタッフは情報ループから外れる
・他人の前で駐在員が現地スタッフを叱ってしまう

異人種、異文化との距離感を縮めることは労力のいること必要であり、楽な方に流れてしまうことが一つの要因と考えられます。

また、個人の問題ではなく、組織文化や組織システムに日本文化が色濃く出ていることから来る弊害もあります。例えば、海外拠点と言えども、日本本社の「稟議システム」が使われることがよくあります。稟議システムは現地スタッフにとっては不可解なものです。なぜこんな根回しが必要なのか、時間がもったいない、その部署のトップがOKと言えばいいのでは、等々。このような形で、日本人と日本文化が要因となって、ボタンの掛け違いが始まったりします。

現地スタッフからすると「どうして私を飛ばして直接部下(上司)に伝えるのか」「裏でコソコソ何を日本語で話しているのか?」といった苦言が出てきます。このようなケースが増えていくと悪循環になり、お互いの関係性は悪化していきます。

「駐在員と現地スタッフに壁が生まれる」「一体感が出にくい」といったことから、「情報が伝わらず、ビジネスに支障をきたす」「情報が入ってこないので面白くない」「無理に近づこうとせず、流そう、あきらめよう」など、雰囲気の悪化にもつながる可能性もあります。

このように書いていますが、私自身も完璧にできていたわけではありません。自分の部署に社外のシステムコーチをつけ、部に起こっている様々なテーマについて取り上げ、チームとして話し合う機会がありました。

私自身は現地スタッフとの壁を取り払って距離感を縮めることに腐心していたつもりでしたが、セッションの中で現地スタッフからは「泉さんは日本と何をやり取りしているのかが分からない」「私を飛ばして(駐在員の)上司と直接コミュニケーションを取ってほしくない」「夜遅くまで何をしているの?」等々の耳の痛いフィードバックを受け、インクルーシブさを体現することの難しさを身をもって感じました。

ちなみに、現地スタッフから評判のよい駐在員もいます。多少英語がたどたどしくとも、現地スタッフと積極的にコミュニケーションを図り、部下が自分のところに来るのを待つのではなく、自ら積極的に部下の所に足を運んで話を聞いたり情報を共有する。あるいは日本から来る日本語のメールを丁寧に英語に訳す、部下の現地スタッフを飛ばしてその下の駐在員とだけ話すのではなく、直属の現地スタッフときっちりとコミュニケーションを図る。また、ハロウィンやクリスマスのイベントに積極的に参加し、好奇心の姿勢を持ちながら相手との距離感を縮める。

受け手からすると、「尊重」と「好奇心」の姿勢で接してくれると悪い気はしないものです。このような場合、周りとの関係性は好循環に回り始め、良い関係性が生まれます。

尊重と好奇心のメタスキルでガンバレ、ニッポンのサラリーマン!

日本のサラリーマンは、多様性を意識することでまだまだ幅を広げる機会があると思います。日本企業には多様性の波が押し寄せて来ていますので、本人が好む好まざるに関わらず、多様性を意識せざるを得ない時代が到来しています。自分の組織内にマイノリティが加わってくることもあれば、自分とは異なるバックグランドを持つチームへ自分がマイノリティとして加わることもあるでしょう。

自分のチームや組織にマイノリティが加わるのような機会があれば、これはチャンスです!
日本のサラリーマンとしてのプレゼンスをあげるチャンスです。例えば、外国人が新たにチームに加わった場合、ぜひ「尊重」と「好奇心」のメタスキル、IDICの考え方を取り入れてみて、その人の世界観を探求しに行ってましょう。マイノリティ側からすると、一筋の希望の光として見られるかもしれません。そして良い関係性を築くことが出来れば、お互いから得られるものがたくさん出てくると思います。

自分自身がマイノリティの立場として別組織に加わる機会があれば、これまたチャンスです!
自分の幅を広げるチャンスです。日本のサラリーマンはこれまでマイノリティ側を経験することは少なかったため、ハードルは高いかもしれません。ぜひ「尊重」と「好奇心」のメタスキルを全開にさせながら、お互いのお国自慢をしてみてください。日本のサラリーマン男子が少しずつ自分たちのコンフォートゾーンから出ていけば、世界中の新たな視点に触れる機会が増え、世界中の人も日本文化に触れることが出来て、グローバルの中での日本のプレゼンスも今よりグッと上がるのではと思っています。

今回は分かりやすくするために、日本のサラリーマンを対象に、文化や国の違いを使いながらIDICやメタスキルの活用方法を考察してみました。しかし多様性は国籍や文化、性別だけではありません。

二人以上の人間が集まればそこには様々なレベル、切り口で多様性は存在します。そのチームや組織に対して、無限の組み合わせによる無限の多様性というIDICの考え方を持ち込み、尊重と好奇心のメタスキルを持ちながらお互いが接すると、多様なバックグランドを持つチームメンバーの関係性が進化し、更に大きなものを生み出す瞬間に出会えることでしょう。ぜひ、多様性の幅を少しずつ広げてみることを始めてみてはいかがでしょうか。

※1 世界経済フォーラムの2021年のジェンダー・ギャップ指数で日本は世界156か国中120位

※2 メタスキルとは、エイミー・ミンデルが提唱した考え方であり、人がその状況に持ち込む哲学、態度、もしくは意図です。特定の状況や出来事と向き合うために、”意図的”にとる立場でもあります。

    • 泉 英次郎
    • CRR Global Japan合同会社トレーナー
    • ORSCC, CPCC, TLCCP

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    京都大学工学部卒業、ウィスコンシン大学経営学修士。 大学卒業後、総合商社に入社。都市開発事業に携わった後、本社の人材育成プログラムや海外スタッフ向けリーダーシッププログラムを構築、推進。国内人事施策、グローバル人事施策の策定・推進にも携わる。アメリカ駐在時には米州地域の人事全般を管轄し、米州地域での行動指針の浸透や研修体系を構築、推進。現在は自動車メーカーで組織開発や人材育成を行なっている。 幼少期、留学、駐在中はアメリカの大自然の中で暮らし、日本では伝統的な学生生活や企業風土を体感、両国の良さを肌で感じている。異なる文化、異なる経験、異なる考え方、それらが組み合わさって生まれるパワーと深みを日々追い求めている。

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