私たちは自然そのものであり、自然は私たちそのものCRR Global ファカルティJanet Frood

Horizon Leadership 代表
CRR Global ファカルティ/Janet Frood(ジャネット フルート)

私たちは自然そのものであり、自然は私たちそのものです。私はこの考え方をもっと深く仕事に取り入れたいと思っています。

私のワールドワークプロジェクトは、自然界のレンズを通してものごとを見ていくような、自然をベースにおいたつながりの実践を、リーダーやチームのコーチングに取り入れることです。これは、ビジネスやリーダーシップ、チームに「リジェネレイティブ・リーダーシップ」の考え方を導入するという、より高いレベルの目標に向かっています。

自分が自分であるための場所

私は自然の中に身をおくことが好きです。呼吸をし、地に足をつけ、内省するために行く場所なのです。

子どもの頃、考えるスペースが必要だったときや不安を感じて抱きしめてもらいたいときにいつも木のところに行っていました。自然はいつも、大きな心で両腕を広げて待ってくれている、そんな場所だと感じていました。

木に抱きつき、感謝をします。

組織のCEOだったころは、ストレスを感じたときや新しい視点が必要だと感じたときに、森に散歩に行ったものです。そうやって、自分が自分であるためのスペースを作っていたのです。

コーチングをするようになってからは、クライアントを自然の中に連れて行くことが多くなりました。クライアントが大きな変化や決断を迫られているとき、あるいは圧倒されそうになっているとき、私は森の中でコーチングを行いました。コロナが拡大してからは、クライアントにインストラクションを与えて、自分自身で自然の中に身をおくことをお願いしました。自然を違った視点で彼らに見せることが非常に大事でした。直感的に、私は、自然というものがどこにいてもつながることのできる、クライアントにとっての味方となるように、その力を借りるようになっていたのです。

自然療法や森林セラピーのガイド


4年ほど前、私は日本の「森林浴」というコンセプトに出会いました。それはまさに「人類の智恵」であり、私にとってとても腑に落ちるものでした。それがきっかけで、北米で自然療法や森林セラピーのガイドになるためのトレーニングを受けるようになりました。

カナダのブリティッシュコロンビア州コルテス島での森林セラピーの研修を受けた時の1枚

そのトレーニングでは、自然を探索することで、自然が我々にどのように新しい情報を教えてくれるのか、そして新しい視点や洞察をもたらし、身体、心、精神とより深くつながることができるのかを学び、そのように人々を案内するガイドとしてのスキルを身につけることができました。これは自然の智恵と、それが私たちをどう導いてくれるのかを理解する扉を開く機会となりました。そして、ここで学んだ中には素晴らしい構造やツールがあり、それを自分のコーチングに取り入れることができました。

また、チェコのプラハで開かれたICF(国際コーチング連盟)カンファレンス2019に参加した際に、プレゼンターの1人に自然をベースにしたコーチングに関する講演をする人がいました。こういったワークが世界中で展開され始めていることがわかった瞬間でもありました。

「リジェネレイティブ・リーダーシップ」を学ぶ旅

そして2021年、私は「リジェネレイティブ・リーダーシップ」を学ぶ旅に出ました。

このアプローチは、自然やすべての生命システムに触発されることで、リーダーシップの意識の根本的な変化を探求する機会と言えます。自然が第一の先生であり、ガイドであり、その知恵とサイクルを学ぶことによって、リーダーシップの実践を学びます。

「リジェネレイティブ(再生的)な考え方と実践は、生命が意識的に自らを更新し、新しい形へと超越し、生存環境が刻々と変化する中で繁栄する、そういったことに資するような条件を生み出していきます。この第一原理は、生命を肯定するリーダーシップと組織開発を支えるものであり、そこでは私たちの組織が生命の進化のダイナミズムを妨げるのではなく、むしろ助けるものになります。」

出典:Regenerative Leadership: The DNA of life-affirming 21st century organizations by Giles Hutchins & Laura Storm  
森林浴の最後にお茶会をしました。

私自身の自然への愛、数々の学び、そしてリーダーやチームがより全体性を持ってつながりを感じながら仕事をするためにはこの「修復作業」(restorative work)が必要だという直感など、多くの要素が一緒になってめぐってきました。

自然の力を取り入れたコーチングセッション

コロナパンデミックにより、ある意味で私は立ち止まり、またさらに深いスペースが創り出されたとも言えます。私は、自然の中でリーダーたちのコーチングを続けています。これは、パンデミックの時期に非常に役立ち、癒しになりました。コーチングのテーマは大体、自分との関係性です。自然は、クライアントに見る、気づく、感じる、その叡智の中で呼吸するように、と促してくれます。そして、それを通じて自分自身の内なる本質(自然)とつながるのです。

チームに対しては、本来であればチームを自然の中に連れていきたかったのですが、それが叶わないこともあったので、チームコーチングセッションの一環として、自然の要素を取り入れてもらうことを始めました。

自然や自然の要素に触れることで、自分たちがつながっているシステムであるという新しい見方が容易にできるようになるのです。私はよくチームに自分たちのシステムの姿を、自然にある物を使いながら一緒に表現してもらいます。例えば、あるときは海岸の流木を使ってチームを表現する彫刻を作ってもらったりしました。自然の要素を取り入れることで、メンバーはよりハートを開き、より互いに寛大になり、チームの多様性が自分たちの力になることを理解しました。

海岸で拾った流木を使って、自分たちの関係性を表現したチーム

そしてそれは、「私」から「私たち」へと意識がシフトすることにも役に立ちました。自然を通して自分たちの関係性システムのテーマのメタファーが現れてくる。それによって相手を大事に思い、システムとしてつながっていることが実感できる助けになるのです。

循環のサイクルが「成長」の鍵

2020年には、「GROW」というビデオ・ドキュメンタリーを制作しました。これは、リーダーたちに「成長」を支える条件や実践について尋ねるインタビューシリーズです。そのプロセスで以下の4つのテーマが立ち現れてきました。「立ち止まる」「静寂」「聴く」そして「希望」。

そこでは、自然の中で過ごす時間が、目的に向かって成長するために必要な「修復作業」であり、深く考えるワークとなることで、インスピレーションを与えてくれると多くの人が述べています。

そして、自然の循環サイクルのように、リーダーもチームも、様々な成長のサイクルを経験していることに気づきました。この循環のサイクルが「成長」の鍵になっていて、私は現在も、個人の学びやグループでのリトリートプロセスに沿ったプログラムを開発するために取り組んでいます。

2021年には、CRR Global創始者の1人であるフェイス・フラーと「Nature Based Retreat」を共同企画しました。私たちの目的は、誰にとっても第一のシステムである「自分自身」に戻る方法を見つけるのを助けることでした。アメリカ、カナダ、メキシコの人たちとバーチャルで集い、素晴らしい体験を共にすることができました。開催した時には国ごとに天気が違ったのですが、それがお互いへのインスピレーションを掻き立てる要素になりました。

2005年の夏に訪れたカナダ・オンタリオ州のヒューロン湖のほとりにて。私のビジネス名「Horizon Leadership」へインスピレーションをもたらした光景です。

また、自然は私たちそのものであり、私たちは自然そのものなのだということ、そして自然を通して私たちは深くつながっていることをもう一度思い出させてくれる時間でした。自然が創り出すエッセンスに満ちた場の感情が、参加者同士の深いつながりを創り出すことをサポートしてくれました。

システムコーチングと自然の繋がり

自然は関係性システムの原型です。ですから、自然は私たちにとって「関係性システムの知性」について教えてくれる偉大な先生なのです。私は、自然とORSCはベストフレンドであり、私たちに多くのことを教えてくれる美しいパートナーだと感じています。

また、自然はシステムが変化するためには時間がかかること、システムは常に出現し続けていること、さまざまなサイクルを経て、自然に回復していくことを教えてくれる素晴らしい先生でもあります。私は、リーダーやチームにはこうした考え方が必要だと思いますし、これらはすべてORSCの原則と一致しています。

自然界のモデルは生態系(ecosystem)であり、関係性の力やつながり、種の多様性を超える寛容さを見せてくれています。自然は多様性と協調性で繁栄します。これは「私たち」の力を示すモデルなのです。より高い目的のために協力し合う関係性システムの力を説明するのにこれ以上のものはないでしょう。

「関係性システムの知性(RSI)」は、私がクライアントに伝えていることであり、私のワークの中心に常にあるものです。そして、自然の生態系はその原理をよく表していると感じています。

アメリカ・コロラド州訪問 2019年5月

自然は、人々が新たな気づきをもって自分自身との関係性を整えることを助けてくれます。そうして地に足がついた土台ができて初めて、次に他者、つまりチームや組織との関係性のチャネルを開くことができるのです。

私はまた、クライアントにチームの第三の存在(関係性システム)を説明してもらう時に、初めに自分たちの関係性システムの中に生きている自然界の要素を言葉にしてもらうようにお願いしています – 庭に例えるならば、一人一人が庭に何をもたらし、庭が繁栄するために何が必要なのか、価値観の共有、役割分担の有無など、多くの道筋が見えてくるのです。

また、自然の中でも「3つの現実レベル」につながることはでき、特に「エッセンスレベル」へつながることが可能です。サポート役でありインスピレーションを与えてくれる自然と共にチームがワークをすることで、自分たちの関係性システムの原点となる、チームの「ドリーミングレベル」の場へと共に立ち戻ります。そこへ戻る道筋を見つけることで、自分たちの本来持っているエッセンスのエネルギーを取り戻す方法を見出すことができるのです。

グループでのガイドウォーク中の1枚

これらのワークは、自分自身がチームの生命の織物のようなシステムの一部であると感じ、見ることができるようになるのを助けてくれます。自然は、新しい成長、繁栄、解放、破壊、死、衰退というサイクルがあることが当たり前であると教えてくれています。そして、すべてが美しく、明るく、繁栄しているわけではない、という深層民主主義的(Deep Democracy)な視点をもたらすことを助けてくれます。

もし、チームが信頼感が低いことに苦しんでいるのであれば、私は自然における信頼関係がどのようなものであるかに触れてもらうようお願いしています。そして私たちは信頼と関係するメタスキルを探求し、それが自然の中でどのように表れているかを見ます。そのイメージの中に身を置くことで、メタスキルはより深く心に残り、チームとしてそのメタスキルにつながることができるようになるのです。

まだまだ、探求すべきことはたくさんあります。結論として、ORSCのすべての原則とツールは自然の中で行うことができ、自然の中でそのインパクトはより大きくなると私は考えています。

自然の知恵をシステムに

今後は、自然をベースにしたコーチングの取り組みのプロセスをもっと作り、それが私の主な仕事となるように進化させていきたいと思っています。そして、これらを世の中に出していくことで、自然の智恵を彼らのシステムに取り入れながら内省し成長するリーダーやチームが増えてほしいと願っています。

森の中で自分自身と自然との関係を深める

私のハイドリーム(最高の望み)は、コロナが終息したら、自然の中や森の中でチームコーチングセッションを行うことです。自然という生態系(ecosystem)を目の当たりにすることで、クライアントチームや組織の関係性システムをつなぎ、パンデミックを乗り越える「修復作業」の手助けをしたいと思っています。

Horizon Leadership
https://www.horizonleadership.ca/

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